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カルロ・ドルチの魅惑的な聖母子と幼き洗礼者聖ヨハネの質感

カルロ・ドルチ聖母子と幼き洗礼者聖ヨハネは質感描写に優れていて目を引いた。

祈りながら心の頂きへ辿り着くように

カルロ・ドルチの『聖母子と幼き洗礼者聖ヨハネ』
Virgin and Child with the Infant Saint John the Baptist by Carlo Dolci / Public domain

人物の肌が美しくて綺麗な絵だと思う。命が宿って見える。ベールの透け具合も好ましく、そして何よりも影の溶け込み方が素晴らしい。総じて色彩のグラデーションが細やかに扱われているところが芸術的ではないか。

カルロ・ドルチは十七世紀のイタリアの画家で、当時のヨーロッパでは宗教画が数多く描かれていて絵といえば宗教画の文化があった。しかし聖母子と幼き洗礼者ヨハネは目線が三者を物語っているのが本当に凄い。

幼き洗礼者ヨハネが幼子イエスを憧れるように見上げていて聖母マリアが幼子イエスに慕わしげに目を伏せている。ここまでは直ぐに分かるものの幼子イエスが一人で下を見ているのは何なのか。地上へ降りて行く流れがあり、気持ちならば授かり物の赤ちゃんだろう、天空から来たみたいな印象を与えながら描かれたと感じられる。

加えて幼子イエスが下を見ているということは地上の救い主になるべき将来を暗示してもいる。弱者の苦しみがちゃんと見えていると伝わって来るのは極めて有り難い。生まれ付きの神だとカルロ・ドルチが宿命を分かって表現しているとしかいいようがない。

だからこそ質感描写に優れているのも自然ではないか。宿命は本来性と切り放せない。本来性は個性の中心にあって生命の様々な性格を決定付けている。どのように滲み出して行く個性なのかを考えられるとモチーフへの知覚も冴えるに違いないはずだろう。

宗教画にせよ、世界が親身に受け取られる。見逃せないのも正しく奥深くて魅力的惑だった。

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