竹野留里は民謡の名人だから夏川りみの涙そうそうを歌うと流石に清逸な境地だ 結城永人 - 2018年1月5日 (金) THEカラオケ★バトルで竹野留里という歌手を知った。昔から芸能人がカラオケの採点機で競い合うテレビ番組だったけれどもいつの間にか一般人も参加するように変わっていたんだ。一月三日の昼下がりにU-18傑作選(U-18歌うま甲子園 夏の頂上決戦の再放送)を観ていたら優勝を取り逃がしたものの竹野留里が印象に残った。 【カラオケバトル公式】竹野留里 「涙そうそう」夏川りみ/2016.7.13 OA(テレビ未公開部分含むフルバージョン動画)|THEカラオケ★バトル(THE KARAOKE BATTLE) 昨年始め、2017年2月からU-18(十八歳以下)四天王に選ばれた一人で、北海道出身の高校生なんだ。キャッチフレーズが「民謡日本一の秀才理系女子」という。十五歳で民謡の名人位を至上最年少で獲得して日本一になって高校では理数科に入って放射線技師を目指しているみたいだ。 初めて観て白いセーラー服と四角い眼鏡のキャラクターが強いと驚いたけれども頑張るのが歌だけではなくて勉強も同じくらい含まれているのが異色だと知って又驚いた。 どちらへ向かうのか。しかし両方でも別に構わない。歌手か放射線技師か、または両方か、はたまたどれも関係なくて新しい夢が後から掴まれるのか、何がどうなるかも分からないほどの人生の可能性に満ち溢れた夢の宝石箱みたいなイメージを与えるのが物凄く面白い。如何にも少年らしい気持ちがして微笑ましい。 竹野留里は十代の実像を良く表している 竹野留里|竹野留里 だから白いセーラー服と四角い眼鏡のキャラクターも強いわけではないか。真に迫っている。狙っなくて普段の生活から自然にデザインされているのが高感度が高い。白いセーラー服は学校の制服だし――室蘭栄高等学校の夏服――THEカラオケ★バトルのU-18の規定みたいで、他の同年代の参加者と衣装の意味付けは大差がない。何といっても象徴的なのは四角い眼鏡で、勉強で目が悪くなったのかはさておき、自分らしさが出ていると考えると泣けて来るくらい良い。本当に個性的だし、他ではおよそ見かけないようなスタイルなのは我が道を行くと実感させる、明らかに。流行りかどうかはちょっと詳しくないにせよ、お洒落ならば相当に斬新な今時の若者だろう。 しかし歌も興味深い。民謡の名人だから表現力がやはり違う。U-18傑作選で最初に聴いたのは準決勝で坂本冬美の夜桜お七という演歌の選曲だった。カラオケの採点機で百点を出して決勝戦へ進出した。音程は良かったけれども声の伸びが足りないようだった。または良いのかも知れないし、ジョン・コルトレーンの至上の愛のテナーサックスとか完全に行き付かないのが逆に途方もなく素敵だと認める場合もある。思い起こしても民謡の歌い方は一本調子で声の伸びが打つ切りみたいな仕方が多い。ロックやポップスなどの歌謡曲では聴き慣れないし、かつてエヴリディや夏祭りやプレゼントが大ヒットして人気バンドだったJITTERIN'JINN(ジッタリンジン)のボーカルの春川玲子くらいしか知らない、日本人の潔さの美学が出ているかぎりは必ずしも不味いわけではないはずだ。 竹野留里は敗れたけれども決勝で美空ひばりの愛燦燦を歌った 竹野留里/Uー18歌うま甲子園 夏の頂上決戦|THEカラオケ★バトル|テレビ朝日 これも演歌に含まれる選曲だ。得意な民謡の日本的な歌い方を活かすにはピッタリかも知れないし、只単に好きだから歌うならば自分らしさが良く出ていてやはり凄いと感心した。とはいえ、難曲に挑んだと他の歌手と競い合って賞杯を勝ち取るには危惧した。美空ひばりは昭和の歌姫だ。加えて全盛期の代表曲の愛燦々とすると歌うには余りに厳し過ぎるようだ。 専門的には分からないにせよ、例えば世界屈指のギタリストの村治佳織はカラオケでMISIAのEverythingか美空ひばりのお祭りマンボしか殆ど歌わないらしいので、どうも並外れて優れた音楽をやっている歌手の一人みたいに想像される。 鈴木杏奈:99.586得点竹野留里:99.549得点佐久間彩加:99.449得点小豆澤英輝:99.078得点 カラオケの採点機の得点は高くて二位だったし、僅差で敗れたものの他の三人は何れも普通の歌謡曲――鈴木杏奈は中森明菜の禁句で、佐久間彩加はHYのNAOで、小豆澤英輝が松任谷由実のダンデライオン~遅咲きのたんぽぽだった――を歌っていたので、竹野留里は惜しいというか、一人だけ難曲に挑んだのは対決的に不利だったかぎり、実力は突出していたし、優勝に値するパフォーマンスだったようにも感じてしまう。 性格は本当に良いと思うし、だから印象にも残ったはずで、THEカラオケ★バトルで勝つためにカラオケの採点機という審査基準を想定しながら簡単な曲を選ぶのではなく、歌手として飽くまでも自分らしさを果敢に示したところが気に入った。 竹野留里の美空ひばりの愛燦燦を聴いて声のうねりが足りないようだった 音符から音符への移り変わりが音楽に表情を与える。解きめくほどに瑞々しければ巧いだろう。至芸というとクララ・ハスキルのピアノやアルテュール・グミュミオーのヴァイオリンが真っ先に挙げられる。美空ひばりの歌も声のうねりは絶品だから昭和の歌姫と呼ばれるのも伊達ではないし、気持ちが親身に入っているのが表情とは又別に本当に素晴らしいと思う。しかし民謡の歌い方ならば一本調子の切れこそ大事かも知れないので――何て潔いのか――竹野留里ならではのユニークな仕上がりの愛燦燦だと喜ぶのも吝かではなかった。 後から他の曲を探してみたら夏川りみの涙そうそう(なだそうそう/オリジナル:森山良子・BEGIN)を歌っている動画の竹野留里 「涙そうそう」夏川りみ/2016.7.13 OAを見付けてとても良いと思った。 沖縄のアレンジで民謡調の楽曲だから流石に向いてそうだ。本当に素晴らしい情感を出している歌声なのを認めるし、民謡の名人の面目躍如か、聴きながらサビでは沖縄の青空が心に広がって正しく涙そうそうの清逸な境地に達した。かけがのない世界を伝えられるかぎり、もはや称えないわけには行かない。 コメント 新しい投稿 前の投稿
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