コロナのエアロゾル感染と新たな対策 結城永人 - 2022年5月1日 (日) 2020年の春先から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が世界中で猛威を振るい、二年が過ぎた今でも完全に収束する気配が見えない。そんな中で、従来の最も警戒された飛沫感染とは少し異なる新たな感染経路が国立感染研究所から発表された。どうして新型コロナウイルスの伝染が対策されながらいつまでも止まらないのかを紐解くものになる。 コロナのエアロゾル感染に注意せよ Novel Coronavirus SARS-CoV-2 by NIAID / CC BY 今まで知られて来た飛沫感染、そして接触感染に新しくエアロゾル感染もあると分かったから三つ全てを避けなければ誰でも新型コロナウイルスにかかり得る。 SARS-CoV-2は、感染者の鼻や口から放出される感染性ウイルスを含む粒子に、感受性者が曝露されることで感染する。その経路は主に3つあり、①空中に浮遊するウイルスを含むエアロゾルを吸い込むこと(エアロゾル感染)、②ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの露出した粘膜に付着すること(飛沫感染)、③ウイルスを含む飛沫を直接触ったか、ウイルスが付着したものの表面を触った手指で露出した粘膜を触ること(接触感染)、である。 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について|国立感染研究所 エアロゾル感染は空気感染に近いもので、メディアでそのように伝えられる場合もあるから混乱しないようにしたい。麻疹や結核などの空気感染ほどの伝染力はエアロゾル感染にはないし、コロナ自体のウイルスとしての病原性も健康な人ならば発症しないか軽症で済むのが当たり前なくらいだから物凄く強いわけではない。すなわち空気感染が可能と呼ばれるとしても無防備で直ぐにかかって忽ち倒れるようなことは一般的に起こり難い。 注意したいのは従来の飛沫感染などと同じ仕方では対策できない部分が出て来るから新しく理解して別の仕方を取り入れる必要がある。 ウイルスのエアロゾル感染とは何か エアロゾル感染は飛沫感染と空気感染の中間にあってウイルス自体は前者のタイプだけれども一定の条件で後者のタイプと同様に空中に滞留して伝染力を持つんだ。 飛沫感染のウイルスの飛沫100μm以上の大きさで、空中では落下し易い。 エアロゾル感染のウイルスの飛沫5~100μm程度の大きさで、空中で落下し易いけれども温度が高い(呼気ならば、大抵、外気を越える)と浮揚したり、揮発すると軽くなったりして長く滞留する。 空気感染のウイルスの飛沫核5μm以下の大きさで、空中で滞留し易い。 出典:「新型コロナはエアロゾル感染も」と感染研 「空気感染」との違いを峰宗太郎医師に聞く 以前はウイルスの飛沫と飛沫核が5μmの大きさを境に区別されて感染経路として飛沫感染と空気感染に二分されていた。しかし飛沫が場合によってウイルスの空気中の滞留を許すことがあることが分かった昨今はエアロゾル感染が新しく追加されたんだ。 エアロゾル感染への有効な対策について Woman opening the door by Amina Filkins / Pexels 最も大事なのは換気を行う。コロナの感染者がいた場所の空気にコロナがあるかも知れないので、それを吹き飛ばすことが何よりも有効な対策になる。 もちろんコロナを予防するためにはコロナの感染者がいた場所に行かないことが最善だし、できるかぎり、余計な外出や他人との接触を控えるのが第一だろうけど、生活上、難しい場合が多いはずだからせめて空気の入れ換えが良く行われてそうな場所を選ぶことが望ましい。 屋外はコロナの飛沫が風で飛ばされたり、広がって薄められてウイルスの伝染力が下がるから屋内よりも遥かに安全と考えられる。 換気と感染については、結核対策を中心に、これまで多くの研究が報告されている。前出の『サイエンス』の論文では、室内のCO2濃度を700-800 ppmに抑制すれば感染は拡大しないと書かれている。2020年に台湾の疾病対策センター(CDC)の研究チームが『室内空気』誌に発表した研究によれば、換気が不十分な大学の建物で27人の集団感染が生じたが、換気体制を強化し、CO2濃度を3204±50 ppmから591-603 ppmまで抑制したところ、感染は収束したという。 「空気感染」日本であまり知られていないカラクリ | 新型コロナ、長期戦の混沌|東洋経済オンライン|東洋経済新報社 CO2モニターという装置(五千から一万円程度)を使うと室内の換気状態が分かるので、それで700~800ppmよりも下げるとコロナ予防の効果が多く得られるようだ。 建物によって窓が開かないなど、普通に換気し難い場合は主に病院の院内感染の対策に使われるというHEPAフィルター(数千から数万円程度)、またはそれが組み込まれた空気清浄機などを使うと空気中の0.3µm以上の微細粒子を捕集できるからコロナも一緒に取り除かれる。 さらに天井付近で紫外線を水平に照射することで、浮遊するコロナを不活性化して感染力を下げることもできる。 今回、共同研究グループは、波長253.7nmの紫外線を液体培地中のSARS-CoV-2に照射し、ウイルスの感染性が99.99%減少することを実証しました。さらに、このSARS-CoV-2の不活化の仕組みはウイルスRNAの損傷にあり、ウイルスタンパク質やウイルス粒子の形状には変化がないこと突き止めました。 紫外線照射による新型コロナウイルス不活化のメカニズム|理化学研究所 コロナの感染力を下げるには紫外線の照射が相当に強力な対策になる。見えないウイルスへの使いどころが極めて難しいけれども室内の天井付近の水平照射が一例として挙げられる。 従来の飛沫感染の対策を過信してはならない コロナがエアロゾル感染も注意しなくてはならないかぎり、もはや従来の飛沫感染では足りない部分が出て来るから対策を修正しないと危ない。 仕切りは空気の流れを止めるからコロナを長く滞留させるし、1.4mくらいでも低くて飛び越えられる。マスクは空気感染に役立つN95マスクでないとコロナが通り抜けたり、どんなマスクでも隙間から入り易い。誰もいない場所でも事前にコロナ感染者がいたらコロナの飛沫やウイルスが漂っているかも知れない。 コロナ対策の考え方を改める必要がある。むろん飛沫感染や接触感染もあり得るから従来の方法を止める必要はないし、やりたければやって良いんだけれどもエアロゾル感染を踏まえて修正しなくてはならない。 特に仕切りは換気を阻むものだと逆効果の可能性を高めるから慎重に扱うべきだ。 マスクは元から重要だと思わないけれどもエアロゾル感染ではさらに効力は下がる。 新たに厳しいのは一人だから大丈夫とはかぎらなくなり、誰かがいた場所は危ない。 改めて重視される基本のコロナ対策 コロナの伝染力は非常に強いということがエアロゾル感染で明らかに認められるので、基本の対策がとても重要になると改めて感じる。 一つは他人との接触を避ける。ブログを書いたりして一人で過ごす。するとコロナを寄せ付けず、感染しないで済む。 もう一つは自分の免疫力を上げる。ヨーグルトを食べたりして病気への抵抗力を増す。するとコロナに感染しても体内でコロナを倒すから発症しないか軽症で済む。 コロナは感染経路に対応した個別の対策も重要にせよ、どんなウイルスかを理解した上での基本の対策を怠らないことが予防の全ての有効性を高める。 コメント 新しい投稿 前の投稿
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