新産業革命と呼ばれるパリ協定に基づく脱炭素化のクリーンエネルギーへの国際的な取り組みの印象 結城永人 - 2017年12月18日 (月) 世界の地球温暖化対策は物凄い勢いで進んでいる。例えば世界有数の巨大な産油国だったサウジアラビアでさえも広大な砂漠にソーラーパネルを敷き詰めたりするように昨今では人々のエネルギー利用から二酸化炭素を削減する方向へシフトチェンジが根本的に行われていると分かった。 Saudi Arabia goes solar|ABC News (Australia) 従来、石炭や石油をエネルギー資源として活用しながら燃やした際に排出される二酸化炭素を減らして地球温暖化をどれだけ止められるかという仕方が主流だったはずだ。 身の周りでは町中にガソリン車が減って電気自動車が増えるから変わっているのを感じたけれども人々のエネルギー利用の大本がもはや刷新されようとしているわけだ。日々、電気が必要ならば供給する発電所に石炭や石油の火力よりも宇宙の太陽光や地上の風力を想定するのが当たり前になって来ている。 現時点で人々のエネルギー利用の大本は完全に移行してないし、世界の発電所の割合も太陽光や風力よりも火力、そして原子力も併せて他の方式に大きく依存している国が圧倒的に多いけれども将来性がなさそうな状況が本格化された地球温暖化対策を示していて凄いと驚く。 一般的に脱炭素化のクリーンエネルギーへの国際的な取り組みとして新産業革命と呼ばれるのも聞いた。 十八世紀後半から十九世紀前半にかけてイギリスで飛躍的に始まったとされる産業革命は蒸気機関の発明と工場制機械工業の拡大が印象深かった。 人類初の鉄道/蒸気機関車に象徴されるように強力な機械に必要なエネルギーとして石炭が重宝され出した。 以降、技術革新が推し進められて二十世紀に入るとガソリン車が世界中に普及したりしながらさらに扱い易い石油の利用も爆発的に加速して行った。 取って代わって新産業革命と呼ばれる所以はエネルギーとして太陽光や風力という二酸化炭素を排出しない発電所の電気を中心的に利用するためで、産出についてかつての石炭や石油の燃焼に由来するのとは全く相容れないところが脱炭素化のクリーンエネルギーを特徴的に示しているし、人類にとって画期的な手法なんだ。 因みに昔のイギリスの産業革命はそれ以前に自明の理だった工場制手工業(マニュファクチャー)に対して呼ばれている。エネルギーは人間が中心的だったし、機械といっても人力の道具こそ重宝されていた。または動物や自然の力にしてもそのままで生活に取り入れるのが当たり前だった。現在でも残っているし、丸っ切り、消滅してはいない。 二酸化炭素を排出しないという点では産業革命よりも非常に優れているのは間違いないし、追い越して見出だされた脱炭素化のクリーンエネルギーの新産業革命に近い――尤も人間や動物が吐いた息くらいでは地球温暖化と懸念されるほどには繋がらなくて全く同じと含まれるかも知れない――からアイデアそのものは却って古くないと笑ってしまいもする。 新産業革命への国際的な取り組みは2015年のパリ協定に基づく Conferencia de la ONU sobre Cambio Climático COP21 Presidencia de la República Mexicana / CC BY 1997年の京都議定書以来、改めて十八年振りに温室効果ガス(CO2)の排出削減を明確に定めた世界の気候変動の枠組みらしい。何れも気候変動枠組条約の締約国会議:COP(Conference of parties)で採択された。国際連合(国連)で必要に応じて開催されるというけれども1995年から始まって現在まで毎年一回は続いているそうだ。 第三回での京都議定書から第二十一回でのパリ協定へと最も大きく変わったのは「歴史上初めて先進国・開発途上国の区別なく気候変動対策の行動をとることを義務づけた」(パリ協定 ― 歴史的合意に至るまでの道のり)ところだった。国連加盟の全百九十六ヵ国に分け隔てなく、温室効果ガスの排出削減の実現が一律に掲げられた。京都議定書では2012年以内とされた国際的な取り組みの期間もパリ協定では2020年以降と永続的に捉え直されている。 1 この協定は、条約(その目的を含む。)の実施を促進する上で、持続可能な開発及び貧困を撲滅するための努力の文脈において、気候変動の脅威に対する世界全体での対応を、次のことによるものを含め、強化することを目的とする。 (a)世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏二度高い水準を十分に下回るものに抑えること並びに世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも一・五度高い水準までのものに誓言するための努力を、この努力が気候変動のリスク及び影響を著しく減少させることとなるものであることを認識しつつ、継続すること。 (b)食料の生産を脅かさないような方法で、気候変動の悪影響に適応する能力並びに気候に対する強靭性を高め、及び温室効果ガスについて低排出量の発展を促進する能力を向上させること。 (c)温室効果ガスについて低排出型であり、及び気候に対して強靭である発展に向けた方針に資金の流れを適合させること。 2 この協定は、衡平並びに各国の異なる事情に照らした共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に関する原則を反映するように実施される。 パリ協定第二条(和文)|外務省(PDF) どのくらい実行するかは各国が独自に目標を設定するけれどもパリ協定の温室効果ガスの排出削減への貢献として国際連合にそうした計画を作成・提出・維持して国内で適切に実行する義務を負っているんだ。 罰則はないので、やらなくても仕様がないというか、それぞれの事情から上手く行かない場合が一般的に避けられない気持ちも想定されているわけだ。 脱炭素化のクリーンエネルギーの導入には今まで社会に蓄積された設備の置き換えが相当に大変ではないか。イギリスの産業革命から百年くらいかけて石炭や石油に合わせて構築された人々の生活を切り替えなくてはならない。取り分け先進国では既存の十分に発展した諸々の基盤へのテコ入れの改革は厳しいかも知れない。新産業革命は地球温暖化を寄せ付けなくて素晴らしいとはいえ、本当に時間をかけて少しずつしか進まないと懸念されずにいなかった。 ところがサウジアラビアの夥しいばかりのソーラーパネルの設置に代表されるように勢い付いているのが世界の実況らしい。 僕はNHKスペシャルの【激変する世界ビジネス“脱炭素革命”】を観て知ったんだ。「世界のビジネス界は今世紀後半に二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする“脱炭素革命”に向け大激変し、その動きは止まらない。なぜか?そこには地球温暖化という課題だけでなく、何より一攫千金の大ビジネスチャンスがある」。パリ協定に基づいて経済そのものが地球温暖化の是正へ向いている。 世界の大口の投資ファンド(基金)や有力な投資家が挙って新産業革命を推し進める脱炭素化のクリーンエネルギーの企業へ資金を莫大に流し始めているので、どんな企業でも石炭や石油に頼ったままの経営を旧態依然と続けながら同調しないでいると潰れて行ってしまう可能性が著しく増しているんだ。 地球温暖化の是正について期待感がついに膨らまずにいない Earth limb, moon, cloud tops from Gateway to Astronaut Photography of Earth / Public domain パリ協定だけというか、参加国の首脳の政府から働きかけるよりも企業が自主的に二酸化炭素の削減を打ち出すのが大事だし、工場や輸送などの経済活動の数々から引き起こされる地球温暖化の最大の原因がはっきり取り除かれ得る。脱炭素化のクリーンエネルギーに適した企業が増えるほどに人々の生活は安全性を高めるはずだ。極点の氷が溶けて海の水位が上昇した挙げ句の気候変動、そして災害が絶えず、恐ろしく予想されるけれども人類の未来は比較的に明るいのではないか。 驚いたことに遠くから見ると 地球はちっとも疲れてるように見えない まだ手おくれじゃないんじゃないか 今のうちに人類が滅びさえすれば きっと地球は天命をまっとう出来る もし本当に地球が大切なら 野牛やシロナガスクジラに譲ったほうがいい セイタカアワダチソウを繁るにまかせ 砂漠を吹きすさぶ風にまかせ レミングを崖から身投げするにまかせる そうすれば地球は月のように冷たく美しく ゆっくりと滅びていけるだろう ぼくらは余計な世話を焼きすぎる 自分たちの住む星を愛するあまり 暖かい大気のねんねこで地球を甘やかす 人間がひとりもいない地球を夢見ること むしろそれがすべての始まり そこに死を見るのは思い上がりだ 木々の間をシマリスが跳ね回っているのに 大空に禿鷹が舞っているのに 谷川俊太郎の遠くから見ると 生真面目に難渋された「余計な世話を焼きすぎる」思いがしかし今漸く実を結びかけている状況なんだ。太陽光や風力でのエネルギーの産出に又別の脅威が何一つ潜んでないかどうかは分からないにせよ、目下、少なくとも「暖かい大気のねんねこ」を免れられるならば有り難いと地面に両足を踏ん張って喜びたい気持ちがする。 かねて人間にとって地球が存在するわけではないし、さもなければ最初から一緒だったはずの約四十五億年の付き合いになるけど、翻って地球が存在するかぎりの人間として考えると詩的ながら幸せな暮らしに必要十分な環境とは何かが万物において問われるべきなので、地球温暖化対策もまだこれからの行く末を担った通過点だろうとはいっておくしかない。 パリ協定の目論見に合わせて全世界の国々が協調しながら二酸化炭素の削減目標が達成されれば良いと思う。国際的な取り組みとして政治だけではなくて経済からも本当に力強く後押しされて脱炭素化のクリーンエネルギーの社会が支障ないほどに実現されて行きそうな印象を与える。予想以上に急速に訪れるかも知れない新産業革命の時流にいきなり直面して狼狽えながら自棄に取り残されないためには知るだけでも前以て胸に留めるのが得策だ。 コメント 新しい投稿 前の投稿
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