レオナルド・ダ・ヴィンチのアイルワースのモナリザは真作といって良いのでは

フランスのルーブル美術館に所蔵されているレオナルド・ダ・ヴィンチモナリザ(フランチェスコ・デル・ジョコンドの妻、リーザ・ゲラルディーニの肖像)は真作として名高い。終生、手元に置いて描き続けられていたようで、未完の絶筆とも過言ではない。世界の名画中の名画というか、絵の代名詞みたいな作品で、芸術の都と呼ばれるフランスの首都、パリのルーブル美術館では数多く所蔵される全ての作品の中から唯一の至宝とも捉えられている。かつて日本にも持ち出されて展示されたこともあったらしいけれども現在では破損する危険性からどこへも門外不出になってしまっているんだ。


かつてレオナルド・ダ・ヴィンチはもう一枚のモナリザを描いていたかも知れなかった


レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたかも知れないアイルワースのモナリザ

非常に若くて有名なモナリザが一見して老けていると驚くのとは正反対で、十歳くらい年の差があると指摘されている。モナリザというと三十代のおばさんが完璧なまでに綺麗な絵だからびっくりせざるを得ないところで、非常に若いもう一つのモナリザは人間として捉えても分かり易いと思う。


モデルの美貌では完全に勝っているのではないか。可愛いといえば可愛いし、見た目の美しさでは明らかに有名なモナリザよりも良い感じがする。十六世紀に描かれて絵の画材の経年劣化が進んでしまうのも比較的に抑えられていて保存状態は良好だから二十一世紀の現在でも作者の気持ちが速やかに伝わる。有名なモナリザも元々は色鮮やかな輝きを示している絵だったとすれば同じくらい美しく魅力的だったはずにせよ、写実的な表現だから二十代の女性の溌剌とした印象までは与えられなかったように想像する。


もう一つのモナリザは1913年に初めて発見したイギリス人のヒュー・ブレイカーというアートコレクターがイギリスのサマセットのマナーハウス(荘園領主の邸宅)から買い取ってロンドンのアイルワールのアトリエに持ち込んだ経緯からアイルワースのモナリザと名付けられるようになった。


元々、レオナルド・ダ・ヴィンチの真作として彼の祖国のイタリアで買い取られてマナーハウスに残されていた作品だったらしい。


ヒュー・ブレイカーは第一次世界大戦で消失される恐れからアメリカへ運び出されて厳重に保管されていた。アメリカはさほど関与してなかったし、およそ戦地からも外れていたけれどもイギリスは積極果敢に挑んでいて敵国のドイツなどから自国に爆撃を大きく受けたりしていた。危機一髪というか、アイルワースのモナリザが今に伝えられるかどうかの歴史的な分岐点だった。


そして第二次世界大戦も終わった1960年代にアメリカ人のヘンリー・フランツ・ピューリッツァーというアートコレクターに売り渡されたんだ。スイスの銀行の金庫に改めて保管され直すと共に本のWhere is the Mona Lisa(モナリザはどこにいる)に取り上げて出版されてもう一つのモナリザというアイルワースのモナリザの新しい存在が世の中に広く知られ出して来たようだ。


レオナルド・ダ・ヴィンチの作品自体が数少ないので、何かが真作として追加されるだけでも衝撃的だし、貴重だと感じてしまう。


ヘンリー・フランツ・ピューリッツァーはアイルワースのモナリザを恋人のために残していたらしい。彼女が亡くなってから四十年くらい後の2008年に長らく保管されていたスイスの銀行から匿名の国際財団が購入したといわれる。以来、一般公開は行われず、最初にヒュー・ブレイカーが発見した頃から変わらない密かな状態のまま、現在に至っているらしい。


何人かの持ち主たちは全てレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた絵に他ならないと考えていたアイルワースのモナリザながら世の中に残された作品は数少なくて――絵は二十点程らしい――新しく出て来るというと真っ先に疑わしい。途方もなく高価な値段が付けられるから詐欺の可能性もどうしても否定できないかも知れない。ルーブル美術館の有名なモナリザがもはや換金できないくらい高いと評価されたりもするし、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵についてはちょっと別格みたいな気持ちにさせられる。


モナリザ財団がジュネーブ(Geneva)で開いた記者会見は、報道陣やテレビカメラでいっぱいになった。鑑定結果を証言するために、同財団によって会場に集められた専門家たちは、「アイルワースのモナリザ」はダビンチが「モナリザ」の10年ほど前に描いた未完の作品だと述べた。


「若かりしモナリザ」の肖像、ダビンチ作品との鑑定結果 via AFPBB News

第一次世界大戦が終結してからアイルワースのモナリザの真贋がイタリアで長らく調査されていたみたいだけど、2012年、直近の持ち主の国際財団から真贋の見極めを依頼されていたスイスのチューリッヒのモナリザ財団が三十五年の歳月を費やしてレオナルド・ダ・ヴィンチの絵に間違いないと鑑定結果を出したんだ。


有名なモナリザよりも十歳くらい若いけれども顔付きが良く似ている。レオナルド・ダ・ヴィンチはモナリザを、二回、描いたという記録が残されていたのと合致している。例えば同時代のジョルジョ・ヴァザーリの伝記でレオナルド・ダ・ヴィンチは1503年にモナリザを描き始めて未完成に終わったものの再び描き始めて1517年に完成したといわれていたようにモナリザは一点とはかぎらない。後者が有名なモナリザで、前者がアイルワースのモナリザと受け取られる。背景などが明らかに未完成のままだ。他にはレオナルド・ダ・ヴィンチに影響を受けた同時代の画家のラファエロ・サンティが制作中のモナリザを目にして感動したのか、確実に模写していたある婦人の半身像と構図がそっくりだったのが非常に大きい。


ラファエロ・サンティのある婦人の半身像

作風は、全然、違うし、服のデザインも胸元が合ってないにせよ、アイルワースのモナリザある婦人の半身像ではモデルのポーズが同じで、背景の両端に円柱が立っている。ラファエロ・サンティはレオナルド・ダ・ヴィンチの最初に描き出したばかりのモナリザを見ていたわけなので、むしろ円柱がなくなっている有名なモナリザこそ本当は贋作ではないかと推測させるくらい信憑性が高いんだ。


ラファエロ・サンティの一角獣を抱く貴婦人

ラファエロ・サンティはある婦人の半身像習作に基づいてオリジナルで一角獣を抱く貴婦人を仕上げた。当時、中世のヨーロッパで、キリスト教の解釈によると一角獣/ユニコーンは聖母マリアに慣れ親しむ架空の動物だった。ラファエロ・サンティが感じ取ったレオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザは聖母マリアのイメージだったはずだ。


荘厳な慈しみ、または静かな愛情がアイルワースのモナリザにも共通している。服の色使いが明るめなのは正反対だ。ラファエロ・サンティは一角獣を抱く貴婦人で人物の内面性を鮮烈に打ち出している。全体的に柔らかみを味わわせる絵だ。アイルワースのモナリザは内面性が人物に秘められながら雰囲気に発散するように描かれているので、ラファエロ・サンティが一つの柔らかな内面性の着想を掴んだ対象として相応しいとも考えてしまう。


ところがイギリスのオックスフォード大学のマーティン・ケンプが絵の細部の描写や人物の表情の深みやキャンバスが使われている(レオナルド・ダ・ヴィンチが気に入りの木板ではなかった)などから誰かが模倣した贋作だと異論を唱えていたり、有名なモナリザを所蔵するルーブル美術館も沈黙を保っていてどうも容認したがらないようだったりするから一般的に判断するのは難しいだろう。


個人的にいうとアイルワースのモナリザはレオナルド・ダ・ヴィンチの真作でしかあり得ない


一つにはラファエロ・サンティの一角獣を抱く貴婦人のモチーフを必要十分に与えている。取り分け人物から醸し出される柔らかみが尋常ではないし、霊的なまでに素晴らしく神秘的に味わわれる趣きはレオナルド・ダ・ヴィンチならではの造形ではないか。有名なモナリザからも受け取られる。そこはかとない現実性が漂っている。肖像画だけれどもモデルの存在そのものこそ捉えていて世間一般を茫漠と超脱している。


目に見える世界を描いた写実的な絵にしては画家に示された気持ちの揺らぎが特徴的なんだ。


そして決め手というか、他の画家では真似できない。ラファエロ・サンティもそうだし、固い、絵に描き出された存在そのものについて。人物にかぎらず、どんなモチーフも内奥から表現するのがレオナルド・ダ・ヴィンチではないか。魂の似姿と呼びたいし、現世の思いだけでは計り知れない神への信仰を介した崇高な芸術性を如実に教えてくれる。


レオナルド・ダ・ヴィンチの弟子が描いたモナリザ
La Gioconda (copia del Museo del Prado) By Apprentice of Leonardo da Vinci. [Public domain], via Wikimedia Commons

世の中でモナリザの贋作は幾つも描かれたし、分けてもスペインのプラド美術館に所蔵されるモナリザの贋作が非常に素晴らしい出来映えながらやはり固い。レオナルド・ダ・ヴィンチの弟子が描いたとされる同時代の絵だし、流石に似通い捲ってはいる。ただし線が強過ぎるんだ。方法上、スフマートといわれるぼかしながら浮き立たせるような輪郭の余りに自然過ぎる扱いが本人と同じくらいには覚束ないのかも知れないし、色味は頷いても独特な個性に納得できない。


プラド美術館のモナリザの贋作にかぎらず、いつも総合的に捉えると崇高な芸術性への纏まった表現力はレオナルド・ダ・ヴィンチでなくては絵に出せないと感じるわけだった。


ところがアイルワースのモナリザは大丈夫ではないか。有名なモナリザと見比べても違和感が際立って少ない。人物の年齢が若くてたぶん二十代の女性だけれども概してふっくらした顔付きに陰影が乏しくて絵として見るからに考え込ませるような謎めきが減っているのが気がかりなだけだ。モデルの容姿の違いなので、別に構わないと認める。画家の独特な個性を受け取るには一向に差し支えない。


レオナルド・ダ・ヴィンチはアイルワースのモナリザを描いたといって良いと思う。


凄いのは親身に魅力的な印象を与える。見ていてどうにも心惹かれる仕上がりなのは背景が完成してないのを除いてルーブル美術館の有名なモナリザですらも凌駕しているのではないか。謎めきが薄いのは物足りないけど、しかしむしろ透き通った謎めきと捉えるならば尚一層と徹底的に考え込ませるんだ。知って永遠に興味深いほどの美しさを湛えているようだ。かりにモナリザの贋作だったり、またはレオナルド・ダ・ヴィンチとは無関係に他の画家が描いたりした絵だったとしても信じ難いほどの傑作だから記憶に留めておきたい。

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