佐々木朗希が完全試合の途中で松川虎生を指差した気持ち

自分の写真結城永人 -

先週の日曜日、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希が日本プロ野球で1994年の槙原寛己以来の二十八年振りとなる完全試合を達成したけど、その途中で、一体、何なのかと気になる場面があった。

佐々木朗希がマウンドから右手の人差し指を向けている

一回の表の三人目から三振を取り始めて、丁度、九人連続で、連続奪三振の日本記録に並んだところで、投球後にマウンドから右手の人差し指を伸ばしてホームベースの方を見詰めながら向けた。

嬉しくて相手の打者にやったら挑発と受け取られて乱闘になるかも知れないものの何も起こらず、審判の判定も特に問題はなかったからたぶん捕手の松川虎生へ何か伝えたかったように想像した。

谷繁元信が人差し指について解説した

佐々木朗希が人差し指を向けた先は松川虎生だとしてもなぜかは分からないまま、YouTubeで色んな人のコメントの動画を観ていたら元プロ野球選手・監督の谷繁元信がそれについて取り上げていて本人に訊いたわけではないにせよ、試合中の気持ちを察することができた。

ソファーに胡座をかいた谷繁元信

三振が、八個、続いて、で、九個目の三振を取ったときにオリックスの二番バッターが外国人だったんですけど、前の打席、ゴロを打たれて、フォークボールを打たれて、上手く追い込んで1ボール2ストライクになったところで、松川がインサイドにストレートのサインを出した、その一瞬、おっという、一秒、あるかないかぐらいですよね、佐々木朗希がちょっと間を置いたんですね。

一瞬、たぶん考えたんです。たぶん自分は、前の打席、フォークで、三振、取れなかったんで、追い込み方からすると、フォークボールで空振りを取れるカウントになったんでね、佐々木朗希の頭の中には、俺ね、フォークだったと思う。それを松川がインサイドのストレートを出したときに、おっ、行けるかな、一瞬、考えて間を置いて、二回、頷いてインサイドのストレートを、パーン、投げたら見逃し三振。それを取った瞬間に佐々木朗希が松川の方を「お前のいう通りだよ」みたいな、ちょっと指を差して表現したんですよ。その瞬間、僕は「あっ、これ、松川、佐々木朗希に信頼されたな」っていうものを感じましたね。

で、次のバッター、吉田なんですけどもここで、又、カーブ、カーブで、そこのカーブの入り、2ストライク目のカーブ、これも、両方、松川なんです。で、このカウントの取り方って、今年、一回も見てないんですよ。カーブ、カーブで、2ストライク、取ったっていうのはね。

だからその前のバッターのあの一球によって「今日は、松川、行ける」っていうかね、信頼してこういうふうに投げておけば大丈夫っていうような、何か、そういうバッテリーが出来た感じがしたんですね。

谷繁元信の解説によると佐々木朗希が松川虎生のリードに信頼感を抱いた気持ちが指差しに出ていた。

聞いて確かにそうだろうと思う。松川虎生はプロ入り一年目のルーキーで、三年目の佐々木朗希とのバッテリーでは主導権は佐々木朗希にあって松川虎生から出されるサインが良いか悪いかを最終的に自分で判断して投げるのが普通だったらしい。しかし完全試合では違っていたんだ。

松川のリードのお陰です。松川の、松川のリードのたぶんお陰ってたぶん松川も思ってます。

佐々木朗希/偉業達成!佐々木朗希投手 完全試合達成直後の様子にカメラが接近!【広報カメラ】|千葉ロッテマリーンズ

完全試合の達成後のインタビューで佐々木朗希は松川虎生のリードが良かったし、信頼して投げたことを強調するように話していたので、やはり通じ合う気持ちがあったと考えるのが自然だ。

完全試合が実現されたキーポイント

【配球】松川虎生『10個目の三振奪った“吉田正尚への攻め”』|(パーソル パ・リーグTV公式)PacificLeagueTV

面白いのは松川虎生が完全試合で最も良かったと捉えるのは吉田正尚にカーブを、二球、続けて三振を取った場面だった。谷繁元信によれば「信頼してこういうふうに投げておけば大丈夫っていうような」感じになったはずの佐々木朗希がマウンドから人差し指を向けた直後の打者との対戦 だった。松川虎生にとっては初めてかどうかは何れにせよ、自分らしい配球で相手チームの主力打者を抑えることができたのが特に嬉しかったのかも知れない。

「(吉田)正尚さんのカーブを2球続けたところが、分岐点だったと思います。正尚さんの思っていたところじゃなかったと思うので、そういう部分でカーブでストライク取れましたし、その後のフォークが生きたかなと思います」

松川虎生/ルーキー松川虎生「カーブ2球が分岐点」7試合目で完全試合演出 佐々木朗希「しゃれたリードをするな」|日テレNEWS

佐々木朗希は「しゃれたリード」と捉えながら自分の思ってもみない吉田尚成へのカーブの入り、そして二球目も同じ球種を続けることにも躊躇いはなかった。

さほど得意ではない球種を繰り返すと打者の目が慣れてあっさり打ち返されるからやらないのが普通のように思う。

松川虎生のカーブへのコメントから推測すると吉田正尚が好打者だからこそ佐々木朗希の絶好調のストレートとフォークに誰よりも重点をおいて狙って来ると見越して二打席は敢えて他の球種を使って躱そうとしたかったのかも知れない。

結果、三打席、完全試合の全打席で三振を喫した吉田正尚は完全に惑わされてしまった格好で、試合後のインタビューでは「打席、打席で修正しながらやってたんですけど。完全に相手が上だったと思います」(屈辱のオリックス 3三振の吉田正は佐々木朗の異次元投球に脱帽「完全に相手が上だった」)と話したけど、もはや「相手」は佐々木朗希と松川虎生のバッテリーこそ指していたと感じる。

やはり日本を代表する打者で、三振も殆どせず、最も打ち取られ難い吉田正尚を無安打に封じ込めたことが今回の完全試合のキーポイントだったんだろう。

松川虎生のリードが功を奏したのはもちろんながら人差し指を向けるほどに信頼を寄せることができた佐々木朗希は安心して思う存分とそれまでにないくらい力を発揮できるようになったとすると完全試合を達成するのは見た目よりも危なかったんだと改めて驚く。

相手はボールをバットに当てることさえも厳しそうだから楽勝とも感じられたけれどももしも佐々木朗希と松川虎生のバッテリーの気持ちがバッチリ通じ合ってなければどこで誰に打たれてもおかしくなかったと想像してしまう。

試合の中盤に差しかかり、体力が落ちて来る終盤へとさらに良い感じを増して投げられるようになったことを告げたのが佐々木朗希の松川虎生へ向けた人差し指で、投手と捕手という人間同士の信頼関係を象徴していたと考えると本当に素晴らしいから気になったのも無理はない。

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