ウィル・スミスがアカデミー賞であってもクリス・ロックを平手打ちした深い理由

自分の写真結城永人 -

アメリカの映画のアカデミー賞の授賞式で、ノミネートされた俳優のウィル・スミスがプレゼンターのお笑いのクリス・ロックを平手打ちして驚かされた。

ウィル・スミスのクリス・ロック平手打ち事件

ウィル・スミスがクリス・ロックに平手打ちした

ロック――ジェイダ、僕は大好き。GIジェーン2、待ち切れないんだな?
スミス――(笑う)
スミス婦人――(笑わない)
ロック――はははは。それは――つまり――良いわけだよ! では。ここに来て――あれ、おぅ、リチャード、はははははははは……。
スミス――(ロックに近付いて平手打ちする)
ロック――おぅ、何だい、何だい。
スミス――(席に戻る)
ロック――ウィル・スミスにクソ殴られたぞ。これ――。
スミス――妻の名前を下らない口から出すな!
ロック――何だい、どうにも?
スミス――そうだ。
ロック――GIジェーンの冗談だったのに。
スミス――妻の名前を下らない口から出すな!
ロック――では出さないよ? できたら、おぅ、では。つまり……テレビの歴史で最高の夜なわけだよね。では。

原文

Rock: Jada, I love you. G.I. Jane 2, can't wait to see it, all right?
Smith: [he laughs]
Mrs. Smith: [she doesn't laugh]
Rock: Hahahaha. It's—that was a—that was a nice one! Okay. I'm out here—uh oh, Richard. HahahahaHahahaha...
Smith: [he approaches and slaps Rock]
Rock: Oh, wow! Wow!
Smith: [he returns to his seat]
Rock: Will Smith just smacked the shit out of me. Thi–
Smith: Keep my wife's name out your fucking mouth!
Rock: Wow, dude?
Smith: Yes.
Rock: It was a G.I. Jane joke.
Smith: Keep my wife's name out your fucking mouth!
Rock: I'm going to, okay? I could, oh, okay. That was a... greatest night in the history of television, okay. Okay.

Watch the uncensored moment Will Smith smacks Chris Rock on stage at the Oscars, drops F-bomb|Guardian News(訳出)

事件の概要としてはクリス・ロックがウィル・スミスの妻のジェイダ・ピンケット・スミス(俳優)を映画のGIジェーンの主人公(丸刈りのデミ・ムーア)に見立てた――彼女に向かって2(続編)が見たいというボケを噛ました――ことが冗談だとしても許されず、平手打ちを食らった。ウィル・スミスの妻は自己免疫疾患による円形脱毛症で、已むなく、髪を丸坊主にしていたので、病人への配慮が欠けているとウィル・スミスは怒った、すなわちクリス・ロックを人間として認められないみたいに感じた結果、一撃をお見舞いせずにいられなかったんだろう。

ウィル・スミスの知的で愉快なイメージの崩壊

僕は意外で、咄嗟に信じられなかった。それまでウィル・スミスを少しだけ知っていてテレビで奇跡の星(原題:宇宙の奇石)を観て知的なイメージがあった。

ウィル・スミスの語りかける顔

自然に知的な愛着を持つ印象を抱いた。ならば自分の身の回りだけではなく、世の中をちゃんと考えられる(社会的に何が有益かを認識できる)人ではないかとも感じた。その後、もう一つ良く覚えているのがYouTubeでウィル・スミスと手巻き寿司を作りながらゆるトーク!こんな気さくなハリウッドスターいる??を観て面白いキャラクターも知った。

ウィル・スミスとチカが談笑している
ウィル・スミスと手巻き寿司を作りながらゆるトーク!こんな気さくなハリウッドスターいる??|バイリンガール英会話 | Bilingirl Chika

さらに歌手もやっていると分かって良い感じがした。ラップを良くやっていて僕は黒人音楽がそうしたヒップホップを含めて好きだけど、ところで今調べて驚くのは青春期に買って聴いていたSummertimeなどのDJジャジー・ジェフとフレッシュ・プリンスのラッパーのフレッシュ・プリンスがウィル・スミスだった。

DJジャジー・ジェフとフレッシュ・プリンスの『Summertime』でラップするフレッシュ・プリンス
DJ Jazzy Jeff & The Fresh Prince - Summertime|DJJazzyJeffVEVO

まさか予想もしない繋がりがあるものだ。DJジャジー・ジェフとフレッシュ・プリンスの頃はグラミー賞も取っていたらしく、元々は音楽から芸能界に入って俳優もやり出した人だったんだ。

ウィル・スミスには悪い感じが、全然、しなくて一言では知的で愉快なイメージを持つけど、むしろ好感度ならば抜群といって良いくらいの存在だったので、下劣な言葉遣いが許せないにせよ、クリス・ロックを一発でも殴るのはイメージが余りにもかけ離れ過ぎていて理解に苦しんだ。

事件の真相には深い理由がもっとあったようだ

どうしてウィル・スミスがクリス・ロックを殴ったかは病人の妻の気持ちを守るためなのは本人の事件後の弁解でも聞かれて人道的に尤もなんけれどもそれまでのキャラクターに合ってないから〈本当の理由〉が他にあるのではないかとか謎が残って精確に捉えられなかった。

しかしヒントを得られる動画が見付かってウィル・スミスのクリス・ロック平手打ち事件にもっと深い理由を探ることがてきた。

[ウィルスミス] 皆さんの意見を受け、到達した考えをもっと深く話します。|BrooklynTokyo

三つあってどれも日本からでは分かり難いウィル・スミスの夫婦関係や妻のジェイダ・ピンケット・スミスの性格や黒人ならではの生き方などが触れられていて非常に興味深い内容になっている。

  1. [緊急]ウィルスミスがブチギレ、僕が彼を悪いと思う意見とその理由。
  2. ウィルスミスの暴行、ジム・キャリー『僕なら200億で訴える』
  3. [ウィルスミス] 皆さんの意見を受け、到達した考えをもっと深く話します。
  4. アメリカンコメディの倫理感を砕いて説明してみました。皆に伝えたいことがある。

一番、重要なのはウィル・スミスが精神的に不安定で、自殺願望に苛まれるみたいな酷い悩みを抱えることが多くて殆ど病気に近い状態なんだ。

だからこそあんなわけの分からないこと、知的で愉快なイメージから外れ捲った行動を取り得るので、実際、事件の直後に泣きながら謝ったり(Will Smith breaks down in Oscars 2022 speech after hitting Chris Rock)して最初から理性的な判断があって例えば愚か者を少し懲らしめようとしたとか考えられない状況とも辻褄が合って来る。

普通に捉えてもウィル・スミスの言動は支離滅裂で、アカデミー賞というアメリカの映画界で最大、世界でも有数の晴れ舞台を度外視した飛んでもない暴挙をやるだけの〈必要最低限の覚悟〉がクリス・ロックを平手打ちした前後しか感じられないのは人間として余りにも阿保過ぎていてアカデミー賞にノミネートされること自体が間違っているかアカデミー賞をもはや阿呆の祭典と呼ばざるを得ない様相を呈してしまっていたんだ。

どんな形の暴力も有害で破壊的です。昨夜のアカデミー賞の授賞式での私の振る舞いは受け入れ難く、許されませんでした。私が犠牲となる冗談は仕事の一部ですが、ジェイダの病状への冗談へは耐えらられずに感情的に反応しました。

クリス、貴方に公に謝罪したいです。私は線引きを越えましたし、間違っていました。恥ずかしいですし、自分がなりたい男を示すような行動ではありません。暴力は愛と優しさの世界にないのです。

アカデミー賞、催しの制作者、全ての参加者と世界中のあらゆる視聴者にも謝罪したいです。ウィリアムズ一家、私のキング・リチャードの家族にも謝罪したいです。私の振る舞いが豪華な旅であったはずのものを染み付けてしまったと深く後悔します。

私は成長途中です。

原文

Violence in all of its forms is poisonous and destructive. My behavior at last night's Academy Awards was unacceptable ane inexcusable. Jokes at my expense are a part of the job, but a joke at Jadas medical condition was too much for me to bear and I reacted emotionally.

I would like to publicly apologize to you, Chris. I was out of line and I was wrong. I am embarrassed and my actions were not indicative of the man I want to be. There was no place for violence in a world of love and kindness.

I would also like to apologize to the Academy, the producers of the show, all the attendees and everyone watching around the world. I would like to apologize to the Williams Family and my King Richard Family. I deeply regrets that my behavior has stained what has been an otherwise gorgeous journey for all of us.

I am a work in progresses.

Violence in all of its forms is poisonous and destructive|Will Smith(訳出)

アカデミー賞の後の謝意は懇切丁寧で如何にもウィル・スミスらしい感じがするけど、ただしそこまで本気でやらなくて良かったはずならば手の平返しみたいな軽薄な印象を与えずにもいない。

精神的に不安定ならば十分にあり得ただろう

ウィル・スミスが弱っているのは主に妻のジェイダ・ピンケット・スミスとの関係で、相当に振り回されていたらしい。

例えば彼女が死別したラッパーの2パックへの思い――最愛の人だったけれども二十五歳でラッパー同士の過激な抗争か何かで銃殺されてしまったから相当な悲劇を被ったはずだ――を抱き続けていて男として嫉妬せざるを得なかった(ウィル・スミスが 2Pac に激しい嫉妬心を抱いていたことを明かす)とか不倫されて喜ばしく公表される(ウィル・スミス夫妻、“公認不倫”の真相明かす)なんて異常な出来事があった。

なぜ結婚したのかが良く分からないし、さっさと離婚するべきみたいな夫婦関係が伝えられる。

ウィル・スミスが足を怪我した妻のジェイダ・ピンケット・スミスを背負って歩いている

恋は盲目だから何がどうなろうとウィル・スミスはジェイダ・ピンケット・スミスから離れず、誰よりも思いを寄せてその愛の重さが有り難くも耐え難いみたいに彼女は彼に逆に荒れるばかりなのかも知れないし、違うかも知れないけど、とにかく二人ともかつてセラピーを受けたりしたといわれるので、必ずしも癒し切れず、現実に弱っている部分が未だに残っているとしても不思議ではなかった。

ウィル・スミスは気持ちが離れがちな妻を引き付けるべく、しかも体を張って守るという黒人としての格好良さを示そうとしてクリス・ロックを殴ってしまったのではないか。

その他、発達障害の一種の注意欠陥多動性障害(ADHD: Attention Deficit Hyperacidity Disorder)と診断された経験を告白したこともあったらしく(Will Smith: actor, rapper and ADHD sufferer)、自らの衝動を抑え切れない部分が未だになかったともいい切れないだろう。

アカデミー賞の晴れ舞台で敢えて咎めるとしても数語の軽口に対して口頭で注意すれば十分な状況だったと思うし、どうして平手打ちが出て来るのかは簡単には分からない。精神的に不安定で、怒りの衝動を抑えられなかったり、多大なストレスで自分を見失っていた可能性はある。さもなければ思い上がりがあったせいかも知れないけれども他の場面での多くの素敵な振る舞いからは認め難い。

ウィル・スミスの平手打ちへの個人的な見解

僕が何よりもいいたいのは彼は暴力を振るってないことだ。相手は怪我もしてない。不快な冗談に同じくらい痛烈な平手を返しただけだからお相子として捉えるべきだ。

巷で手を出せば何でも暴力と呼ぶような向きがあるのは悲しい。親が子に、先生が生徒に、上司が部下に、こういう主従関係があって何等かの権力が働いているところで出される手は人間的に優れない(卑怯というか、薄情というか)から全て暴力として否定するべきだろうし、さもないと世の中は決して良くならないと考えるけど、今回のウィル・スミスとクリス・ロックの場合は個人間の一対一の恐らく互いに対等な立場でやっていることなので、かりに前者の平手を暴力(身体的な嫌がらせ)として否定するならば起因となった後者の発言も冗談として肯定するのではなく、暴力(精神的な嫌がらせ)として同じように否定して欲しい。

結局、どちらが良くも悪くもないし。事件としてはお互い様というか、決着を付ける必要はないだろう。

蝶ネクタイを締めたクリス・ロックが椅子に座っている

クリス・ロックもウィル・スミスを僅かな罪でも訴えないということは性格的に寛大なだけではなく、お笑いとして際どい表現で誰かを怒らせることもなくはないと分かってそうだ。以前にも持ち前の冗談を差別発言として非難されていた(ウィル・スミスにビンタされたクリス・ロック、アジア系へのジョークも問題になった過去【アカデミー賞】)。しかし自分らしい笑いのために容認されない辛さを受け入れながら決意を持ってやっているような素晴らしい気持ちの持ち主なのではないか。もしも批判が言葉狩りに過ぎない観念の押し付け(偉振った欲望)ならば受け入れて幸せになれるのは本人でも社会でもないだろう。クリス・ロックはウィル・スミスに殴られても直ぐに反撃しなかったし、今後、騒動をさらに膨らませるようなこともしないと良いと思う。

参考:Will Smith–Chris Rock slapping incident

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