プリシラ・アーンの上を向いて歩こう(坂本九)|友情歌
2012年に発表されたプリシラ・アーンの上を向いて歩こう/Sukiyakiが友情歌として胸に響いた。
作詞は永六輔、作曲は中村八大で、オリジナルの歌手は坂本九になる。
- 坂本九(1962/オリジナル)
元々は中村八大が永六輔に声をかけて1961年の自身のリサイタルのために用意した楽曲だったけれども坂本九のマネージャーだった曲直瀬信子の推薦によってリサイタルの当日から、急遽、坂本九が歌うことになり、彼の持ち歌として1962年にシングルレコードで発表された。
永六輔は前年に日本とアメリカで締結された日米安全保障条約への抗議活動――国内にアメリカ軍の基地を置かせないなど――を徹底的に行っていた。安保闘争と呼ばれる大きな騒乱の政治状況があったれども結果として挫折せざるを得なかった悲しみを込めて上を向いて歩こうを執筆したとされる。実作の詞からは分からなくて孤独を味わうという気持ちが書かれているだけなので、様々な読み方が可能になっている。
国内で大ヒットしたけれども翌年の1963年にアメリカでもレコードが出るとやはり大ヒットしてさらに世界中で同じように売り上げを伸ばして合計一千三百万枚を越える記録を残した。
英語圏ではSukiyaki(すき焼き)という題名の歌として知られる。なぜかは外国で最初に発表された際、1962年のイギリスで、トランペット奏者のケニー・ボールが自身のレコードに付けたのが発端だった。人々に短くて注目され易くて日本の曲だと分かるようにしたかったらしい。ケニー・ボールは日本語のSukiyakiとSayonara(さよなら)を知っていて後者では暗い印象だからどうしようと悩んでいたら契約するパイレコードの奇縁から歌手で俳優のペトゥラ・クラークに前者が良いといわれて意を決した。
ケニー・ボールのレコードはさほどヒットしなかったけれどもアメリカでも発売されてラジオのDJが覚えていて、後日、知り合いの伝で、手に入れたオリジナルの坂本九の上を向いて歩こうのレコードをSukiyakiと称してかけるとラジオ局に問い合わせが殺到するくらい多くの注目を集めてついにアメリカで発売されて大ヒットする切欠になった。
プリシラ・アーンの上を向いて歩こうのカヴァーは心に染みる叙情性があってとても素晴らしい。涙の雨か星の光が降り注ぐようなアレンジで、オリジナルの楽しげな印象とは対照的ながら詞に込められた深い味わいをはっきり引き出していると認める。友情歌としては悲しみへの思い遣りが上を向いて歩こうの大事な良さだろうけれども的確に捉えているのではないか。詞も曲も歌も全てが美しく纏められた音楽になっていて芸術的に好ましい仕上がりだと思う。
歌詞の内容
出だしの部分;
上を向いて歩こう
涙がこぼれないように
思い出す 春の日
一人ぼっちの夜上を向いて歩こう
にじんだ星を数えて
思い出す 夏の日
一人ぼっちの夜幸せは雲の上に
幸せは空の上に
言葉遣いは寂しいけれども「一人ぼっちの夜」は誰でも同じではないかと連帯感を醸し出すところが友情歌として稀有な魅力を放つ。日常の些細な出来事から人生の顕著な出来事まで通用する情感の幅広さが本当に圧倒的で、どんな場面でも励ましを与えられるような表現になっているのが面白くて頼もしい。
その他のカヴァー
十五組の楽曲;
- オット・ブランデンバーグ(1963)
- ブルー・ダイアモンズ(1963)
- ジュエル・エーケンズ(1965)
- テイストオヴハニー(1980)
- セレーナ(1989)
- 長渕剛(1997)
- タック&パティ(2003)
- オルフ・アルナルズ(2010)
- シェネル(2011)
- ジェイミー・ポール(2011)
- アミーア(2011)
- タマミックス(2011)
- イヴァン・リンス(2014)
- ウィンストン・フランシス(2015)
- G・H・ハットのアリーナ・レネエの起用(2018)
世界でカヴァーが続々と生まれている上を向いて歩こうは友情歌のスタンダードな名曲に他ならない。
参考:上を向いて歩こう Sukiyaki Sukiyaki by Kyu Sakamoto 坂本九 上を向いて歩こう 歌詞&動画視聴 Cover versions of 上 を 向いて 歩こう {Ue o muite arukō} by Kyu Sakamoto
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