杉山未紗のTom's Diner(スザンヌ・ヴェガ)|人生歌
2011年に発表された杉山未紗のTom's Dinerが人生歌として胸に響いた。
作詞作曲はスザンヌ・ヴェガで、オリジナルの歌手も彼女になる。
- スザンヌ・ヴェガ(1984/オリジナル)
1980年代の初め、スザンヌ・ヴェガが通っていたアメリカのニューヨーク州ニューヨークシティのハーバード大学の近くにあって常連客になっていたトムズレストランが作品の舞台になっている。
スザンヌ・ヴェガがTom's Dinerを着想したのは友人の写真家のブライアン・ローズから仕事に関して聞かされた人生の色んなことを硝子越しのように自分を抜きにして見ているという話が切欠で、そのような感覚をトムズレストランでの一時に重ね合わせながら自分なりに表現したらしい。
実際に書いて完成したのは1981年の二十二歳頃だったけれども1984年に音楽家のコンピレーションアルバムのFast Folk Musical Magazine (Vol 1, No. 1)に収録されときに初めて発表された。そして三年後の1987年にオリジナルアルバムのSolitude Standingに収録されると同時にシングルでも発表された。
しかしこの曲がヒットして世の中に著しく知れ渡ったのは1990年のDNAによるリミックスだった。アカペラで歌声だけだったオリジナルにソウルⅡソウルのKeep On Movin'のビートを付け加えたらしい。欧米を中心にダンスミュージックとして物凄く売れたんだ。
当初、DNAは著作権の許可を取らずに勝手にやっていたけど、聴くとスザンヌ・ヴェガも気に入ってレコード会社は損害を訴えるよりも買い取りを決定して正式に売り出したのが今日のTom's Dinerの並外れた知名度を築いたかも知れない。
大人気でリミックスやサンプリング(ラップなど)やカヴァーが幾つも出て来て1991年にTom's AlbumというDNAのリミックスを含めたコンピレーションアルバムが出てもいる。
杉山未紗のTom's Dinerのカヴァーはオリジナルの全てが静けさに包まれたような独特の詩的で神妙な情感をお洒落に再構成していて本当に良いと思う。人生の一分一秒という極僅かな時間、あるいは瞬間の瞬間の生活まで大切にしたい気持ちが固有のリズムに乗って相応しい熱気を帯びて伝わって来る。表現上、芸術的にも人間的にも惹かれずにいないし、素敵としかいいようがない作品だ。
歌詞の内容
出だしの部分;
朝方の
街角の
食堂に
座っている珈琲を
注ぐ人を
差し向かいに
待っている半分しか
満たされない
示しさえも
する前に来ている
誰かを
彼は窓に
見ている原文
I am sitting
In the morning
At the diner
On the cornerI am waiting
At the counter
For the man
To pour the coffeeAnd he fills it
Only halfway
And before
I even argueHe is looking
Out the window
At somebody
Coming in
食堂での何気ない日常の場面が淡々と綴られているけれども交えられる私情が胸に迫る。命に支えられた人生の尊さが一言一句に際立って歌われていると考える。たぶん抜き差しならない現実を歴史的な瞬間に置き換えて行くのは神の手かも知れない。題材は平凡でも内面的に崇高な印象を与える。
その他のカヴァー
十五組の楽曲;
- ミシガン&スマイリー(1990)
- マヤ・クリスティナ(2003)
- ジェニファー(2005)
- カルマ(2006)
- ジアナ・ヴィスカルジ&ミッヒ・フジチュカ(2009)
- ビンゴプレイヤーズ(2010)
- バンダブラジレイラ(2013)
- DJソウルスターのジョゼ・ハーロックの起用(2014)
- ロストフィンガーズ(2014)
- ジョルジオ・モロダーのブリトニー・スピアーズの起用(2015)
- トワックスのソロミーナの起用(2016)
- 6616のフェリシアの起用(2016)
- トーマス・アンソニーのホワイト・ジプシーの起用(2018)
- DJラックのシェリー・ネルソンの起用(2019)
- ドン・ブラウンリッグ(2019)
世界でカヴァーが続々と生まれているTom's Dinerは人生歌のスタンダードな名曲に他ならない。
参考:Tom's Diner Tom's Diner by Suzanne Vega Suzanne Vega – Tom's Diner Lyrics Cover versions of Tom's Diner by Suzanne Vega
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