生きる化石と呼ばれるシーラカンスは実に三億五千万年前の姿を止める魚だった 結城永人 - 2017年10月15日 (日) 古生代のデボン紀の中頃に出現してその後半から姿を変えず、三億五千万年前のまま、止め続けている古代魚の一種がシーラカンスで、生きる化石と呼ぶに相応しい存在を代表的に保っている。 シーラカンスの種類と生息地について Coelacanth off Pumula on the KwaZulu-Natal South Coast, South Africa by Bruce A.S. Henderson / CC BY 目下、南アフリカの北東海岸のチャルムナ川の沖やインド洋のコモロ諸島の海のラティメリア・カルムナエとインドネシアのスラウェシ島の近海のラティメリア・メナドエンシスの二種類の現存が確認されている。 何れも水深150~700m程度の海底谷の洞穴を住処に泳いでいる。人間が普通に海を泳いでいて遭遇する可能性は極めて少ない。しかし近年はディープダイビングで水深100mでも数十分は潜水できるようになって接触しながら詳細な研究調査が少しずつ行われているらしい。 テレビの【シーラカンス “生きた化石”を追え!】(地球ドラマチック)でやっていたけれども広い海で、中々、見かけられないし、20℃くらいの水温を好むからなるべく深い方が遭遇し易くて100m程度で浅いと寒流が訪れるのを待たなくてはならないんだ。 シーラカンスが初めて見付かった衝撃 Marjorie Courtenay-Latimer and Coelacanth by Unknown / Public domain シーラカンスが化石以外の生魚として初めて見付かったのが1938年の南アフリカの北東海岸のチャルムナ川の沖で、漁師の網に引っかかったラティメリア・カルムナエだった。 南アフリカのイースト・ロンドン博物館の学芸員だったマージョリー・コートニー=ラティマーが海洋生物の標本を様々に収集していて漁師が引き上げた網から珍しい魚を見ているという噂を聞き付けて何なのかと気に留めながらもしも又出て来たら報せるように頼んでいたらしい。 そして世紀の大発見が齎されたんだ。当時は化石から中生代の白亜紀の終わりの約六千五百万年前に恐竜などと共に絶滅したと考えられていたシーラカンスだったので、まさかの本当にあり得ない衝撃が世界を駆け巡ったに違いないだろう。 シーラカンスの身体的な特徴について Latimeria chalumnae replica by Citron / CC BY-SA 一見して他のどんな魚とも似てないというか、鰭の様子が細長くて数量が多い――胸鰭と腹鰭と第一尻鰭が二つずつと第二尻鰭と第一背鰭と第二背鰭と第三背鰭と尾鰭が一つずつの十基十四枚を持つ――のが風変わりで、気持ちを引き付けられずにいない。体長150cm前後で体重100kg以上と比較的に大柄の体格にしては弱々しい感じがするけれども古代魚ならば普通で、さほど急いで泳がなくて良かったせいだろうと悠久の印象を与える。見ていると心も安らがずにいなくなる。 シーラカンスの脊椎動物の進化への影響 Finding the ceolacanth | DenoFish|Nat Geo WILD 生物学的にいうとシーラカンスは脊椎動物の進化に大きく関わっている魚として物凄く面白い。 およそ魚類から両棲類や鳥類や爬虫類を経て哺乳類へ至るまでの最初の分岐点に位置している。シーラカンスの胸鰭や腹鰭などの何れかは人間の手足の起源とも目されるわけなんだ。何て小さいのか。驚くのはシーラカンスは肺も小さく備えているらしくて水中から陸地に住処を変えて行った生物そのものにとっての過渡期を示していると捉えられる。 大昔、シーラカンスがいなかったら人間を含めて陸地に動物という動物は昆虫(海洋の甲殻類から陸上へ進化した無脊椎動物)以外には悉く存在しないかも知れなかったんだ。 人間から思い起こすかぎり、生物としての種と類を越えた直系の先祖そのものだから神の生き写しと拝むのも吝かではない。 少なくともシーラカンスの向こう側に今此処の存在への崇高な光をまざまざと感じ取るほどの時空は真実に素晴らしく詩的な経験だろう。 生きる化石と呼ばれる生物の中でも代表的で、特有の古代ロマンを踏まえると目を向けずに入られないのは鰭の動きなんだ。 シーラカンスの魚として珍しい鰭の動き Latimeria chalumnae (model) (coelacanth) 1 by James St. John / CC BY シーラカンスは他の魚とは全く違う部分が備わっていて鰭の付け根の関節の可動域が非常に広い。すなわち胸鰭と腹鰭と第一尻鰭と第二背鰭は柄によって陸上の脊椎動物の手首や足首などに見られるぐるぐる回すような動きに近い。他の魚では一般的に無理だし、正しく例外的な泳ぎ方を行っている。辿々しくて可愛いらしいけれどもまたはひょっとして溺れているのではないかと藻掻きながら水の中で生きるのに向いてない感じさえもしてしまう。何れにしても幾つかの鰭の付け根の立体的な動きが人間などと良く似ているからやはりこれは陸地へ上がるように進化して行く直前の状態ではないかと想像されずにいない。 元々は何種類もいたらしくて海だけではなくて川にも生息していたみたいだ。 最近まで生魚として見付かっているラティメリア・カルムナエとラティメリア・メナドエンシスが陸上へ進化したとはかぎらなくてもう既に絶滅した他の種類のシーラカンスだったかも知れないにせよ、人類の誕生にも三億五千万年という途方もない年月で基幹的に繋がって来る魚だから考えても興味と関心が尽きないはずだろう。 参考サイトラティメリアシーラカンスの謎シーラカンス体内に肺を発見、進化の過程で退化か謎多きシーラカンス、寿命は百年以上? コメント 新しい投稿 前の投稿
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