恋人との別れが辛いのは絆も及ぼす涙だから 結城永人 - 2016年8月10日 (水) レイの涙は不思議な魅力に溢れている写真だ。一度、見たら忘れられないという強烈な印象を残すかのようでいてそこを離れるや案外と直ぐに心から消え去ってしまう。 レイの涙は破局した恋人への復讐の一環だった ところが再び目にすると同じ感じがするんだ。俄かに焦りながら写真との出会いと別れを繰り返すうちに気付かれるのが、何度、見ても一つの時空が変わらなかったという。写真と自分が巻き込まれたまま、世界が動きを止めてしまっている。 情報によるとレイは恋人のミラーと破局した後に彼女へ復讐するつもりで創作活動へ勤しんだ時期があったらしい。その中から涙も生まれた。復讐するくらいだから相手が泣いているのも奇妙だけど――泣きたいのはレイではないか――しかしだからこそ復讐なんだろう。 心のプリズムによって屈折した七色の光の流れをモデルも見上げているのか レイが泣いてない人を逆に泣かせたように考えると涙の構図の妙が雪解けを起こすのを感じなくはない。彼女はまだ残された愛によって仕様がなく泣いた振りをしている、彼のために。絆が素晴らしい。レイも知っていた。きっと最初から何も変わってはいないのに破局するまで気付かななかっただけの気持ちが涙ではないかしら。愛のせいで離れ合う二人なんて本当に珍しい間柄だろう。奇々怪々ともいえる。むろん二人とも生きている。 レイとミラーは心の繋がりが薄かったのか、それとも二人の愛が弱かったせいか。考えが纏まらなくなる。どちらもあり得ないとすればレイとミラーが余りに親密過ぎたんだろう。気付かない愛で結ばれていたかぎり、もやは絆に疲れ尽くしての破局だった……。 本当に泣いているのは誰でもない。写真のモデルもマネキンらしい。涙もビーズといわれている。ところが悲しみが伝わって来るんだ、演技ではなく。明らかに受け留めるべきは絆こそ二人の足跡を惜しんでいたのではないかしら。愛は続いても失われる縁が恐ろしいほどに勿体ない。知るほどに取り戻したくなる。ただし涙は無理だと告げていた。レイは情けなくも逆しまに愛を貫いてミラーも同じように帰っては来なかった。実話でもそうだったみたいだけれども終わりが最後ならば詩のためだろう。 レイの涙の不思議な魅力の一端に触れられたか どこか救われているんだ、見ていると絆に著しく胸を痛めつつも。嘘泣きで離れ合うまでの二人の愛の深さはむしろ惨い。何気なく目を向けるには薄気味悪い写真でしかないと思う。くっ付けば良いだけだと好きなのに躊躇われると泣きながらでは誰にも理解できないに違いない。そうではないから僕も見られた。先へは進まない世界があるんだ。詩が呼ばれている、今此処で。 すると落ち込んだ絆も二人のために立ち直るのではないか。見守って欲しい。昔のように人生の糧として喜びを味わわせてくれれば最高だと思う。未来へ期待が募るし、夢に至っては救われもするはずだ。 コメント 新しい投稿 前の投稿
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